[歌劇]にせの女庭師(ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト)

にせの女庭師(表)

にせの女庭師(裏)

収録曲 [歌劇]にせの女庭師全3幕 LD2枚組(収録時間:149分) [イタリア語/日本語字幕] 1988年
ドロットニングホルム宮廷劇場管弦楽団・合唱団(指揮:アルノルド・エストマン)

ドン・アンキーゼ(市長):ステュアート・ケイル(テノール)
サンドリーナ(女庭師:本当の名は、侯爵令嬢ヴィオランテ):ブリット=マリー・アルーン(ソプラノ)
ベルフィオ-レ伯爵:リチャード・クロフト(テノール)
アルミンダ(ドン・アンキーゼの姪):エヴァ・ピラット(メッゾ・ソプラノ)
ラミーロ:アンニカ・スコグルンド(メッゾ・ソプラノ)
セルペッタ(ドン・アンキーゼの召使い):アン・クリスティーネ・ビール(ソプラノ)
ナルド(サンドリーナの付き人:本当の名は、ヴィオランテの従僕ロベルト):ペッテリ・サロマー(バス)

ジャケットの解説によると、この作品はモーツァルト18歳の時の作曲となっています。序曲を始め、確かにモーツァルトらしい華やかさが感じられます。

侯爵令嬢ヴィオランテはベルフィオ-レ伯爵と相思相愛であったが、ある時、嫉妬にかられた伯爵が彼女を傷つけ、故郷に居られなくなって逃げてしまう。ヴィオランテは傷つけられてもなお伯爵を諦めることができず、花作りの女に身をやつして旅に出る。彼女には忠実な従僕ロベルトがついている。ヴィオランテはサンドリーナと名乗り、ロベルトはナルドと名乗り、二人はここラゴネロまでやってきて市長のドン・アンキーゼの家に住み込んだところである。

第一幕

ドン・アンキーゼ邸の広間。今日は、アルミンダとベルフィオ-レ伯爵との見合いの日である。人々は会場の準備に追われている。しかし、アルミンダに心を寄せるラミーロにとっては最悪の日。「僕には限りない苦痛。悩みや嘆きしかなく、さわやかな日は二度と輝かない。」と歌いうなだれている。一方、ドン・アンキーゼは最近住み込んできた美しい庭師のサンドリーナに惚れ込むが、迷惑顔のサンドリーナは「私は不幸で不運な身。非情な運命が私を痛めつけ、私はこの世で最も惨めな女よ。」と歌い嘆く。ドン・アンキーゼの妻の座を狙うセルペッタは、そんなドン・アンキーゼを苦々しくながめる。

お見合い場にアルミンダが座っている。見合い相手のベルフィオ-レ伯爵がまだ現れないので機嫌が悪い。そこに遅れてきたベルフィオ-レ伯爵。遅れてきたことを詫びもせず「なんと美しく、なんとしなやかで、なんと輝かしいのか。」と歌いアルミンダに求婚するが、不機嫌なアルミンダは素直に求婚を受け入れようとしない。

ドン・アンキーゼ邸の中庭。花作りをしているサンドリーナの前をアルミンダとベルフィオ-レ伯爵が通りかかる。二人が結婚すると聞いて気絶するサンドリーナ。ここでベルフィオ-レ伯爵はサンドリーナがヴィオランテであることに気づき、「ヴィオランテ生きていたのか。震えが止まらない。頭の先からつま先まで、自分の所在がわからない・・・。」と戸惑う心を歌う。二人のただならぬ会話を聴き取り、真実を確認しようとベルフィオ-レ伯爵に詰め寄るアルミンダ。そしてそのアルミンダを諦めきれないラミーロがアルミンダに詰め寄る。一方、サンドリーナに心を寄せるドン・アンキーゼがサンドリーナに詰め寄ると、そのドン・アンキーゼの妻の座を狙うセルペッタがドン・アンキーゼに詰め寄る。このような三つ巴の愛憎劇の中、第一幕が終わる。

第二幕

ドン・アンキーゼ邸の支度部屋。アルミンダは、サンドリーナを求めてさまよい歩くベルフィオーレ伯爵をつかまえ、「私は罰を科してやりたい。恥ずべき男のクズに。私は引き裂いてやりたい。あなたの心を!」と厳しく責め立てる。入れ替わりに現れたのはセルペッタとナルド。ナルドはセルペッタに愛を捧げる。セルペッタは冷たい態度をとっていたが「愛のアリアをひとくさり歌ってくれたら愛してあげてもいいわ。」と答える。喜ぶナルドは「イタリア流にやればこう言うだろう。その愛くるしい顔が、僕の胸の奥、心に火をつけていつも僕を悩ませる。」と歌うがセルペッタは首を縦に振らない。ならばとナルドはフランス流ならこう。イギリス流ならこう・・・と歌ってみせるが、とうとうセルペッタの首を縦に振らすことができず「なんて頑固な娘だ」とあきれてしまう。

ドン・アンキーゼ邸の居間。ドン・アンキーゼのところにラミーロが物々しく現れ、裁判所からの手紙を手渡す。その手紙には「殺人犯であるベルフィオ-レ伯爵を逮捕せよ。」と書いてある。ラミーロはこれでふたりの結婚はなくなったとほくそ笑む。急きょ裁判となる。裁判官は市長ドン・アンキーゼ。「おまえは、侯爵令嬢ヴィオランテを殺害したカドで殺人犯として手配されている。殺人罪を認めるか?」と問う。ベルフィオ-レ伯爵は素直に罪状を認めるも、ヴィオランテが死んでしまったかどうかはわからないと答える。そこにサンドリーナが現れ、「侯爵令嬢ヴィオランテは私です。私は彼を弁護します。嫉妬に狂った彼が私を刺したのは事実ですが、私はこうして生きています。私は彼を許します。」と歌う。頭が混乱してきたドン・アンキーゼは休会を宣言する。ベルフィオ-レはようやく会えた恋人のヴィオランテを抱き寄せようとするが、ヴィオランテは「私はサンドリーナ。似ているかもしれないが、さっきのは嘘よ。」と取り合おうとせず、その場を走り去る。・・・と、サンドリーナの悲鳴が聞こえる。ナルドはセルペッタから「嫉妬したアルミンダがサンドリーナを誘拐させた。深い森に投げ捨てると言っていたわ。今頃は猛獣の餌食になっているでしょう。」と聞かされる。

夜の森の中。サンドリーナが恐怖におののいている。サンドリーナを救うべく、ベルフィオ-レ伯爵とナルドが現れるが、真っ暗で何も見えない。続いてアルミンダとドン・アンキーゼも様子を見にくるが、やはり真っ暗で動きが取れない。5人は、すぐ近くにいるのに互いに気づかず息をひそめてじっとしている。そこにセルペッタとラミーロが加わると、なにやら人の気配を皆が感じ合うようになる。徐々に目も慣れてきた。突如、サンドリーナとベルフィオ-レ伯爵が錯乱状態となって「私は恐ろしいメドゥーサよ。僕は恐れを知らぬアルケイデス。」と歌い出す。ラミーロが「この騒ぎの元は君だ!」とアルミンダを責める。こんな騒ぎはもうこりごりだと5人が恐れ歌う中、第二幕の幕が降りる。

第三幕

ドン・アンキーゼの寝室。ドン・アンキーゼが寝ているとアルミンダがやってきて、ベルフィオーレ伯爵との結婚式を早く開いてほしいと訴える。しかし、ドン・アンキーゼは結婚契約書を破り捨ててしまう。姪のアルミンダの結婚相手に、気の触れた伯爵ではまずいと考えたのだ。

一方、中庭では正気に戻ったサンドリーナとベルフィオ-レ伯爵がいる。伯爵が「ようやく君を見つけた。私が君の傍らに留まるか、絶望して死ぬのを君が眺めるかどちらかだ。」と、返事を迫っている。とうとうサンドリーナはベルフィオ-レ伯爵の求婚を受け入れることになる。

ドン・アンキーゼ邸の居間。3組の結婚式が執り行われることになった。侯爵令嬢ヴィオランテとベルフィオ-レ伯爵。アルミンダとラミーロ。そしてロベルトとセルペッタの召使いコンビだ。一人蚊帳の外となったドン・アンキーゼも満足顔。「女庭師バンザイ。誠実な心の持ち主だ。」と皆で歌い幕となる。

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