[歌劇]フィガロの結婚(ウォルフガング・アマデウス・モーツアルト)

フィガロの結婚

フィガロの結婚

フィガロ(裏)

収録曲 [歌劇]フィガロの結婚全4幕 DVD2枚組(収録時間:182分) [イタリア語/日本語字幕]
NHKエンタープライズ  ウィーン国立歌劇場管弦楽団・合唱団(指揮:カール・ベーム) 1980年上演

アルマヴィーヴァ伯爵:ベルント・ワイクル(バリトン)
伯爵夫人:グンドゥラ・ヤノヴィツ(ソプラノ)
フィガロ(アルマヴィーヴァ伯爵の下僕):ヘルマン・プライ(バリトン)
スザンナ(伯爵夫人の侍女、フィガロの婚約者):ルチア・ポップ(ソプラノ)
ケルビーノ(お小姓):アグネス・ヴァルツァ(メゾ・ソプラノ)
マルチェルリーナ(女中頭):マルガリータ・リロヴァ(ソプラノ)
バルトロ(医師):クルト・リドル(バリトン)
バルバリーナ(庭師の娘):マリア・ヴェヌーティ(ソプラノ)
ドン・バジリオ(音楽教師):ハインツ・ツェドニク(テノール)
ドン・クルチオ(判事):クルト・エクヴィルツ(テノール) 他

歌劇となっていますが、モーツァルト自身は「オペラ・ブッファ」と記述したとの記録もあるようで、内容的にも喜歌劇(オペレッタ)に近い気がします。1980年の来日公演となっておりますので、ルチア・ポップが41歳の時ということになります。たしかに若い。声も体もゴムまりが弾けるような力強さがあります。また、ヘルマン・プライがこの当時46歳。アグネス・ヴァルツァは36歳。みんな若い。若い。一方、指揮者のカール・ベームは86歳。体力的に不安があったのでしょう、椅子に座って指揮棒を振っています。彼はこの公演の翌年に他界していますので、そういった意味からも貴重な映像です。

第一幕

アルマヴィーヴァ伯爵の城の中の一室。物差しでフィガロがベッドのサイズを図っています。この部屋はフィガロとスザンナの結婚の祝いに、伯爵が下さった部屋です。奥様と伯爵の部屋に挟まれるように隣接しており、お仕えするのにとても便利だと喜ぶフィガロ。しかしそれを聞いたスザンナは猛反対。スザンナに色目を使う伯爵の悪巧みだというのです。それを聞いたフィガロも怒りをあらわにします。伯爵自らが廃止したはずの封建的な特権(初夜権)をスザンナに行使しようというのか。

二人が退場するのと入れ替わりに医師のバルトロと女中頭のマルチェルリーナが現れます。この二人はフィガロとスザンナの結婚を邪魔しようと企んでいます。バルトロは以前、自分の結婚をフィガロに妨害された恨みがあります(「セビリアの理髪師」に収録)。一方、マルチェルリーナはフィガロに心を寄せており、しかもお金を貸しています。彼女はその証文を脅しに自分とフィガロとの結婚を企てています。二人が悪事の相談をしているところにスザンナが入ってきて、マルチェルリーナと意地の張り合いを演じ、遂に二人を部屋から追い出してしまいます。

入れ替わりに入場したのがお小姓のケルビーノ。ケルビーノはバルバリーナと一緒にいるところを伯爵に見咎められクビを言い渡されたというのです。伯爵夫人にとりなしていただくようスザンナにすがるケルビーノ。その時、魔の悪いことに伯爵が入ってきました。あわてて隠れるケルビーノ。部屋には自分とスザンナの二人きりだと思い込んだ伯爵はスザンナを口説き始めます。王の命令で近々ロンドンへ行くこととなった。フィガロも同行させたい。夕刻に庭で会いたいのだが・・・と。やんわり拒否するスザンナ。そこに音楽教師のドン・バジリオが現れます。慌てて、ケルビーノが隠れたところと同じ場所に身を隠す伯爵。ケルビーノが見つかりはしないかとハラハラするスザンナ。部屋にいるのは自分とスザンナの二人きりだと思い込んだドン・バジリオは、伯爵はスザンナを好いている。スザンナはケルビーノと怪しい関係にある。ケルビーノの伯爵夫人を見る目つきはおかしい・・・などとウワサを広げ出します。

身を隠していたものの腹に据えかねた伯爵は怒りをあらわにしてドン・バジリオの前に飛び出します。ドン・バジリオ、スザンナ、伯爵の三人による三重唱が披露されたところで、ケルビーノが伯爵に見つかってしまいます。怒りが収まらない伯爵。許しを請うケルビーノ。援護するスザンナ。伯爵はケルビーノをクビにする代わりに、軍隊の士官に任命します。軍隊に入隊すると、もうめったにお城に来ることはなくなると知りガックリするケルビーノ。フィガロは「もう飛ぶまいぞ、この蝶々。」を歌いながら、ケルビーノとともに出ていきます。

第二幕

伯爵夫人の居間。夫の愛が再び戻ってくるようにと願う夫人のアリアで始まります。スザンナが入ってきて伯爵の話をしていると、フィガロが入ってきて「伯爵に手紙を出しましょう。夫人が浮気をしていると。そして今夜、スザンナと伯爵が庭で会う約束をしてあるのなら、ケルビーノを女装させてスザンナの身代わりにしよう。奥様はそこで現場を取り押さえるのです。」と作戦を披露する。フィガロの計画は早速実行に移されます。ケルビーノが登場し、女装の準備をしていると伯爵が入ってきます。あわてて衣裳部屋に隠れるケルビーノ。スザンナも物陰に身をひそめます。

部屋に入ってきた伯爵はフィガロが書いた手紙を見ていて、夫人に疑いのまなざしを送ります。そのとき、衣裳部屋から「ドスン」と大きな音がしました。「衣裳部屋に誰かいるな。」と夫人を詰問する伯爵。「スザンナです」ととっさに答えた夫人。「スザンナ出ておいで」と伯爵が何度呼びかけても出て来ません。それもそのはず、衣裳部屋の中にいるのはケルビーノです。業を煮やした伯爵は部屋中の扉をこじ開けるための道具を持ちに、夫人を伴って出ていきます。

一部始終を物陰から見ていたスザンナは、ケルビーノを衣裳部屋から出し自分が入れ替わりに衣裳部屋に入ります。ケルビーノは他に出口がないので止むなく窓から逃げ出しました。まだ怒ったままの顔で道具を手に戻ってきた伯爵。すると、衣裳部屋からはスザンナが出て来ました。そこにフィガロが現れ、(結婚のための)楽隊が整列したことを伯爵に報告しました。早く楽隊のところに行きましょう(=結婚式を挙げましょう)とはやるフィガロを伯爵は制止します。「そうあわてなさんな」と。そこに庭師のアントニオが入ってきて、窓から少年が飛び降りて逃げて行ったと申し出てきました。少年とは誰だ?と尋ねる伯爵に少年ではなく、私が窓から飛び降りました・・・と、答えるフィガロ。

繰り返し伯爵から浴びせられる詰問に、フィガロ・スザンナ・伯爵夫人の3人が知恵を出し合って対応し、乗り切ります。一件落着かと思いきや、バルトロ、マルチェルリーナ、ドン・バジリオが入ってきました。マルチェルリーナは伯爵に訴えます。「フィガロは私から借金しており、その返済ができなければ私と結婚するという証文があります」と。これを聞いてうなだれるフィガロ・スザンナ・伯爵夫人。対照的にしたり顔のバルトロ・マルチェルリーナ・ドン・バジリオ・伯爵。

第三幕

城の広間。何やら考え事をしている伯爵。スザンナは裁判を有利に運びたいために伯爵にそっと近寄り、今夜密会する約束をします。スザンナの愛を得たと思い込み喜ぶ伯爵。弁護士なしで裁判に勝ったとフィガロにそっと囁くスザンナ。その囁きを耳にし、二人の結婚を邪魔してやると怒る伯爵。いよいよ裁判のとき。伯爵の前に、判事のドン・クルチオ、マルチェルリーナ、バルトロ、フィガロ、スザンナが並びます。マルチェルリーナに借金を返すか、それともマルチェルリーナと結婚するか。フィガロはこう答えます。「私は貴族の子。親の同意がなければ結婚できない。」と。親は誰か?と問われ「探しています。自分の右手に妙な彫り物がある。」ここで血相を変えたのがマルチェルリーナとバルトロ。若い頃、二人は愛し合い子供をもうけたが、盗賊にさらわれてしまった過去があったのです。そしてその幼子の右手にも彫り物が・・・。親子とわかり抱擁しあう四人。ここで、マルチェルリーナとバルトロの結婚も決まります。

対照的にガックリうなだれる伯爵とドン・クルチオ。裁判が終わり皆が引き払った後に、夫人とスザンナが入ってきます。続いて村の娘たちも入ってきて、歌を歌いながら夫人に花束を贈ります。しかしよく見ると、村の娘たちの一人はうつむいたまま。ケルビーノが軍を抜け出し女装していたのです。後で入ってきた伯爵に見つかり、いよいよクビかと思われたその時、村の娘たちの一人であるバルバリーナが進み出てこう言います。「伯爵は私を抱いてキスするとき、何でも望むものをくれてやると言いました。私とケルビーノを結婚させてください。」と。夫人の前で不倫を暴露され、ぼやく伯爵。結婚を祝う行進曲が聞こえてきました。そして村人が歌う中、厳かに二組の結婚式が執り行われました。村人の歌は「清らかな操をお守り下さる、われらの徳高い殿様を・・・」というものでした。ここで第三幕が閉じます。

第四幕

夜の城内の庭園。バルバリーナが灯りを手に何やら探しています。そこに通りかかったフィガロとマルチェルリーナ。探し物は、伯爵からスザンナに渡すよう言われたピンとのこと。それをスザンナの不実と勘違いして怒るフィガロ。フィガロはバルトロとドン・バジリオを伴って現れ、スザンナの不倫の現場を隠れて見るがいい、と言います。ここで歌う「これから俺が演じるのは、愚かな亭主の役だ・・・」はこの幕の聞かせどころです。

夫人とスザンナが互いに衣裳を取り換えて登場します。スザンナは隠れてこちらを見ているフィガロを見つけ、少しからかってやろうといたずら心を出します。そこへバルバリーナとの逢引きに現れたケルビーノ。スザンナに扮した夫人を発見し言い寄ります。そこにスザンナとの逢引きに現れたのが伯爵。邪魔なケルビーノを追い払い、それが自分の妻と知らず抱き寄せようとします。逃げるスザンナ(実は夫人)。うなだれるフィガロを呼び止めたのはスザンナ扮する夫人。すっかりだまされたフィガロは伯爵とスザンナの密会を夫人(実はスザンナ)に打ち明けます。しかしやがて、声でそれが夫人に扮したスザンナであることに気づくフィガロ。しかしフィガロは敢えて気づかぬふりをし、夫人(スザンナ)にしつこく言い寄ります。とうとう怒りでフィガロに平手打ちや蹴りを喰らわすスザンナ。スザンナに「知っていたよ」と打ち明け仲直りするフィガロ。

そこに騙されていることに気づかず必死の形相で現れたのが伯爵。それに気づいたスザンナは「あのおろかな色男を、なぐさめてやりましょう」と再び夫人に成りすまし、フィガロの愛を受け入れるところを伯爵に目撃させ東屋(あずまや)に逃げ込みます。怒った伯爵はフィガロと夫人の不倫の現場を見つけたとばかりにフィガロを東屋から引きずり出し「みんな来い」と大声を出します。そして衆人の前に自分の妻を引きずり出したつもりが、最初に出て来たのがケルビーノ、続いてバルバリーナ、そして夫人(実はスザンナ)。スザンナはここでも演技を続け、伯爵に許しを請います。「許さん」と怒る伯爵。そこにスザンナに扮した夫人が現れます。ここで形勢逆転。あっけにとられ許しを請う伯爵。それをやさしく許す夫人。最後は全員の合唱「苦しみと気まぐれで過ごした日を、喜びと満足でしめくくるのは、ただ愛だけだ。」で幕を閉じます。

フィガロの結婚CD

収録曲 [歌劇]フィガロの結婚全4幕 CD3枚組(収録時間:173分) [イタリア語]
ポリドール  ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団・合唱団(指揮:カール・ベーム) 1968年上演

アルマヴィーヴァ伯爵:ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)
伯爵夫人:グンドゥラ・ヤノヴィツ(ソプラノ)
フィガロ(アルマヴィーヴァ伯爵の下僕):ヘルマン・プライ(バリトン)
スザンナ(伯爵夫人の侍女、フィガロの婚約者):エディット・マティス(ソプラノ)
ケルビーノ(お小姓):タティアナ・トロヤノス(メゾ・ソプラノ)
マルチェルリーナ(女中頭):パトリシア・ジョンソン(ソプラノ)
バルトロ(医師):ペーター・ラッガー(バリトン)
バルバリーナ(庭師の娘):バーバラ・フォーゲル(ソプラノ)

ディースカウとプライという、当時のバリトン界の人気を二分したといわれる二人の揃い踏みアルバムです。また、フィガロをプライが演じ、伯爵夫人をヤノヴィッツが演ずるのも、当時のはまり役だったということでしょうか。

このアルバムの3枚のCDは、表面部分がレコード盤を模したデザインとなっており、とてもシックな作りになっています。

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